031775 ランダム
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四つ葉★

四つ葉★

葉っぱのフレディ

   春がすぎて夏がきました。

 葉っぱのフレディは この春 大きな木の梢に近い 太い枝に生まれまし

た。

 そして夏にはもう 厚みのある りっぱな体に成長しました。

 5つに分かれた葉の先は 力強くとがっています。

 フレディは 数えきれないほどの葉っぱに とりまかれていました。

 はじめフレディは 葉っぱはどれも自分と同じ形をしていると思っていま

したが やがて ひとつとして同じ葉っぱはないことに 気ずきました。と

なりのアルフレッド 右側のベン すぐ上のクレアは女の子です。春風にさ

そわれで くるくる 踊る練習をしました。日光浴のときは じっとしてい

るのがよいということも覚えました。夕立ちがくるといっせいに雨に体を洗

ってもらいました。

 フレディの親友は ダニエルです。だれよりも大きくて 昔からいるよう

な顔をしています。考えることが好きで 物知りでした。ダニエルはフレデ

ィにいろいろ教えてくれました。ダニエルはフレディが木の葉っぱだ とい

うこと。木の根っこは地面の下にあって見えねいけれど 四方に張っていて

だから きは倒れないこと。目の下にあるのは公園で おはようとあいさつ

にくるのは小鳥たちであること。月や太陽や星が 秩序正しく 空をまわっ

ていること。そしてめぐりめぐる季節のことなど みんなダニエルが教えて

くれたことです。

 フレディは「葉っぱに生まれて よかったな」と思うようになりました。

友だちはたくさんいるし見はらしはよいし 枝はしなやかだし その上 風

通しも日当たりも申しぶんなく お月さまは銀色の光で照らしてくれるから

です。




 夏になると フレディは ますますうれしくなりました。お日さまが早く

昇って おそく沈むのでたくさん遊べます。かんかん照りの暑さは なんて

気持ちがよいのでしょう。夜になっても 昼間の暑さが残っているのですか

ら フレディは気持ちがよくて 夢をみている気分です。

 公園に 木かげを求めて 大ぜいの人がやってきました。

 ダニエルは立ちあがり「さあ 体を寄せて みんなでかげを作ろう。」と

呼びかけました。

 フレディは ダニエルに たずねました。「どうして そんなことをする

の?」するとダニエルは「暑さから逃げだしててきた人間に 涼しい木かげ

を作ってあげると みんな喜ぶんだよ。」と言いました。ダニエルの言った

とおりでした。木かげに おじいさんやおばあさんが 集まって来ました。

子供たちも来ました。お弁当を広げる人もいます。フレディたちは 葉っぱ

をそよがせて 涼しい風を 送ってあげました。

「フレディ これも葉っぱの仕事なんだよ。」

 ダニエルの話を聞いて フレディはますますうれしくなりました。老人た

ちは木かげから出ないで小声で 昔の思い出を話しているようです。子ども

たちは 木に穴をあけたり 名前をほったり いたずらもするけれど 笑っ

たりり走ったり 生き生きしています。

 けれど 楽しい夏はかけ足で通り過ぎていきました。たちまち秋になり 

十月の終わりのある晩 とつぜん 寒さがおそってきました。

 フレディも 仲間のアルフレッドも ペンもクレアも ぶるぶるふるえま

した。

 みんなの顔に 白く冷たい粉のようなものがつきました。朝になると 白

い粉はとけて 雫がキラキラ光りました。


「霜がきたのだ。」とダニエルが言いました。

もうすぐ冬になる知らせだそうです。

 緑色の葉っぱたちは一気に紅葉しました。公園はまるごと虹になったよう

な 美しさです。アルフレッドは濃い黄色に ペンは明るい黄色に クレア

は燃えるような赤 ダニエルは深い紫色に そしてフレディは 赤と青と金

色の三色に変わりました。

 なんてみごとな紅葉でしょう。

 いっしょに生まれた 同じ木の 同じ枝の どれも同じ葉っぱなのに ど

うしてちがう色になるのか フレディにはふしぎでした。

「それはね-ーーーーーー」とダニエルが言いました。「生まれたときは同

じ色でも いる場所がちがえば 太陽に向く角度がちがう。風の通り具合も

ちがう。月の光 星明かり 一日の気温 なにひとつ同じ経験はないんだ。

だから紅葉するときは みんなちがう色に変わってしまうのさ。」

 風が変わったのは そのあとでした。夏の間 笑いながらいっしょに踊っ

てくれた風が 別人のように 顔をこわばらせて 葉っぱたちにおそいかか

ってきたのです。葉っぱはこらえきれずに吹きとばされ まき上げられ つ

ぎつぎとおちていきました。


「さむいよう」「こわいよう」葉っぱたちはおびえました。そこへ 風のう

なり声の中からダニエルの声が とぎれとぎれに きこえました。

「みんな 引っこしをする時がきたんだよ。

とうとう冬が来たんだ。ぼくたちは

ひとり残らず ここからいなくなるんだ。」 

 


































 


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